ひさしぶりに勉強会へ参加したので議事録かきました!(そしてひさしぶりにブログにログインしました)
概要
- http://service-design-night.connpass.com/event/26986/
- 日時:2016年3月2日 19:00〜22:00
- 場所:Tech Lab Paak(渋谷)
- 概要:「デザイナーと事業企画者それぞれの視点で、組織・チームとしてデザイン思考を上手く活かし実践するために何をすべきか、登壇者と来場者でディスカッションを通して、プロダクト開発に関わる人々のデザインへの理解を深め実践へ活かしてもらう」
Keynote「ビジネスの成長におけるデザイナーの役割とは」
- 株式会社グッドパッチ 取締役 村越悟氏
企業はなぜデザインを必要とするのか
- 「経営はデザインを中心に据えて行われるべきだ」エムテド 田子)という言葉に共感している。だが、現状これを体現した実例は少ないという認識
- そうしたなかでグッドパッチがやったことは例えば:
- DeNAとグッドパッチの共催イベント「U25」の開催
- http://careerhack.en-japan.com/report/detail/590
- 会長からデザインの重要性を説く言葉がでてきた
- 世界的にも、経営とデザインの融合は進んでいる
- デザインファームの買収や、超大起業がデザインに投資する流れがある
- 現代はハイ・コンセプトの時代
- 作者: ダニエル・ピンク,大前研一
- 出版社/メーカー: 三笠書房
- 発売日: 2006/05/08
- メディア: 単行本
- 購入: 26人 クリック: 194回
- この商品を含むブログ (298件) を見る
- ハイ・コンセプトの時代に必要な「6 sense」
- 機能だけでなく「デザイン」
- 議論よりは「物語」
- 個別よりも「全体の調和」
- 論理ではなく「共感」
- まじめだけでなく「遊び心」
- モノよりも「生きがい」
- 現代社会の特徴:予測可能性が低く、社会の変動性が高い
- → 物質的な価値よりも情緒的な価値が重要
- → そこでデザイナーは、その価値を具現化し、ビジネスとユーザーの間をとりもつ存在になる
- 組織の中での役割:
- 起業家や経営者は、企業の価値が未来にわたって持続するビジョンを描く存在
- デザイナーは、経営者がつくったビジョンを理解し、それをユーザーと共感できるかたちに翻訳・言語化する存在
- → デザイナーは、良き理解者であり、良き翻訳家
- デザイナーに求められているもの:ユーザーが伝わる形でビジョンを具現化するアウトプットすること
- デザイナーがビジネスを理解する上で重要な視点:「観見二眼」
- http://ncode.syosetu.com/n6168h/3/
- 「眼の付け様は、大きに広く付るなり。観見の二つあり、観の目つよく、見の目よわく、遠き所を近く見、近き所を遠く見ること、兵法の専なり」
- そしていま、グッドパッチが注力しているところ
- チームビルディングと場のファシリテーション:デザインする対象を理解するフェーズを最初にしっかりやる
- デザインプロセスの組織へのインストール
- デザインは生活の中から新しい問いを発見していく営みである
デザインエージェンシーのマーケットポジション
- IDEOが博報堂の傘下に入った!
- 「デザインに関する問題として、ひとつの要求事項に対して、はばひろいコラボレーターと協力してやっていかなきゃいけないのに、それができてなかった」ティム・ブラウン
- BCGの「シェーピングアプローチ(協創型戦略)」
戦略にこそ「戦略」が必要だ ―正しいアプローチを選び、実行する
- 作者: マーティン・リーブス,クヌート・ハーネス,ジャンメジャヤ・シンハ,御立尚資,木村亮示,須川綾子
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2016/02/16
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (2件) を見る
- いろんな人と協働して、大きなムーブメントを作っていく
- → 複数のステークホルダーを編成する「オーケストレーター」が必要
- デザイン領域の拡張に伴い、一人ですべての専門性を保有することに無理が生じている
- → 求められている人材:強い専門性が一つあり、それとはことなる専門性を持つ人とつながる(コミュニケーションする)ことができる「H型人材」
- グッドパッチでは、新たな領域とつながる道を模索している
- 「SPARK」http://spark.tokyo.jp
- FiNC社との協働 http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000024.000008880.html
- グッドパッチは「偉大なプロダクトは偉大なチームから生まれる」という信念を持ってこうしたことをやっている
- 良きコラボレーターとの協働を通じた、デザインのエコシステムを作ることが重要
質疑応答
- (会場)著名なコンサルがデザインファームを買収しているが、成果はでてきているのか?
- (村越)買収の成果について私からは話しづらいが……ただ、世界全体が課題感をもって、そうした(買収などの)流れが出来てきている現状そのものが、ポジティブなものだと思う
- (会場)社会の予測可能性の低さがデザイナーのポジショニングとどう関連するのか、イメージしにくい
- (村越)デザインをビジネスとしてやっていこうとした場合、独自の技術や考え方を囲い込んで一社独立でやろうとするよりも、他者とつながることでよりデザインの幅が広がると考えている
- (会場)承認を得ずにどうやってプロジェクトを前に進めているのか
- (村越)承認を得ずに進めているのではなく、承認はちゃんと得ている。承認を得るプロセスを改善する取り組みを進めている
パネルディスカッション「事業企画者、デザイナーが考えるビジネス × デザイン」
- Coiney株式会社 リードデザイナー 松本隆応氏
- 株式会社メルカリ 執行役員 / 株式会社ソウゾウ 代表取締役 松本龍祐氏
- 株式会社リクルートライフスタイル UXDesigner /Product Owner 磯谷拓也氏
- 株式会社root 代表取締役 / デザインディレクター 西村和則(モデレーター)
デザイナーとして、会社の事業計画や経営にそれぞれどういうふうに関わっているか
- (C松本)プロダクトの戦略から、細部のデザインまですべてに入っている。実際に手を動かしてつくるのは見た目を別のデザイナーだが、それをもって経営陣と対等に話し合える状態にならないと渡り合えない
- (磯貝)リクルートライフスタイルでは、組織の規模的に自分とボードメンバーと直接やり取りする機会はそれほどない。チームメンバーが自律的に動けるようにするためにはどういうふうにすればよいかを考え、ワークショップを行ったりしている
- (M松本)ビジネスを組み立てるプロセス、つまり経営がやってることはそのままずばりデザイン思考だと考えている。そこでデザイナーとしては、事業計画を考えて「いけるかな、面白いサービスになるかな」というのをまず考えて、次にこの事業がビジネスとして成り立つかどうかを考えている。こうしたことを、頭のなかで短時間でざっと考えられるようになること(=クリエイティブとビジネスの思考の切替を素早くできるようになること)が重要
- また、デザイン思考ではなく「つくる」ほうのデザインという観点でいうと、デザインは一番最初にユーザーさんから支持を受けるところ(=タッチポイント)になりうるので、経営的にも重要だと言える
チームにデザインの重要性をそれぞれどうやって浸透させているか
- (C松本)ピクサーの本に載っていた言葉「どんなデザインも最初は駄作である」。この言葉をチームに対してよく言っている。とにかく、未完成の状態でもいいからどんどん見てもらって、そこから練り上げていくことを勧めている
- 見せる相手は、プロジェクトのトップだったりその辺を歩いている人だったり、いろいろ。とにかく人の意見を聞く。
- ただ聞くだけでは些末なデザイン処理(この色がどうとか)にコメントが集まりがちだが、そうではなく、最初に議論のポイントを明確にして意見を聞くのが結構重要
- (磯貝)サービスデザインはプロダクトそのもののデザインと、それをつくる組織のデザインの両方を含んでいる。実際につくる現場を知ってるのはデザイナーだし、そうした現場からのボトムアップの視点をどう組織に入れていくかを重要している
- (M松本)一般のプロジェクトでは、デザイナーの手数が絶対的に足りないケースが多い。そこでうちは、チームに対してデザイナーを豊富に投入することを意識している。そうすると、議論した結果を即座にアウトプット(モックアップ)できるようになるので、自然とデザインがプロジェクトの中心になっていく
デザイナーとして、事業の成長にどう関わっていくべきか
- (C松本)デザイン手動の文化をつくるということには貢献できると考えている。経営者が持っている明確なビジョンを、できるだけ明確に・濁りのない状態でアウトプットする。そうするとチームメンバーが自走できるようになり、事業の成長にも寄与すると考えている
- そのはじめの一歩としては、率先してホワイトボードの立つと良いと思う。そうすると議論を主導する立場に立てる
- (磯貝)ディレクターのいうことをそのままにしない、というのは重要だと思う。つくりながら「これ変だな」と思うところに気づき、それを具体的にディレクターに問いかけることが大切
実際のサービスデザインや組織づくりのなかで苦労したこと
- (M松本)いまのところ、ぶっちゃけ、苦労はあまりしていない。こうするとうまくいくなあと思うことでいうと、
- ひとつは、デザイナーの数を豊富にすること
- デザイナーの手数があれば、議論したことをすぐにアウトプットして次の議論をするというサイクルが高速になる
- もうひとつは、作り始める前にひたすらインプットして思考する期間を長めにとったこと。いまやっているプロジェクトでは、UI検討も含めた事業検討に1ヶ月かけた。私とインターン生の2人でひたすら企画を考えて検証してまた考えてというのを繰り返した。そして結果的に、実際に手を動かす時間が短くなったと思う
- こうしたことは小さなチームでやるとうまくいく。新しいプロダクトをつくろうという最初の段階では、1テーブルに収まるくらいのチームサイズが良い
- ひとつは、デザイナーの数を豊富にすること
- (磯貝)いまやっているプロダクトは海外向けなので、気軽にユーザーを見に行くことができないし、そもそもの文化・国民性も違う。そうしたなかで、実際現地に行った私が、日本のチームメンバーに現地の空気感をどう伝えるかということに苦心している。現地でやっていることをリアルタイムに(臨場感をもって)日本の現場を伝えるとか。そうした仕組みを作るのが大変だった
これからのデザイナーは何を学ぶべきか
- (M松本)基本的なデザインスキルは頑張って身につけてください。経営陣と対等に渡り合いたいと思うなら、あわせて、クリエイティブとビジネスとテクノロジー、この3つの柱をいかに理解していくか(いかにクリエイティブ以外の知識を持つか)が重要だと思う
- (C松本)いま私たちは、産業革命に匹敵するほどの革命のまっただ中にいる。「ブログ テンプレート」「ブログ モックアップ」とかで検索するといくらでも出てくる。そうしたなかで、デザイナーがいかに新しい物をつくるか(=すでにあるものをどう組み合わせて新しいものを作るか)ということが重要になってくる。ここでは、よりシステマチックな思考が求められると思う
- (磯貝)どういう分野であれ、他と違うこと、新しいことを考えることが大切だと思う。自分が持っているものと、新しいものとの関連を考えたり。ふんわりした言葉だが(笑)、「日々考える」というのが大事だと思う
質疑応答
(会場)磯貝氏は、スクラム開発のプロダクトオーナーとして、どこまでチームのやることに踏み込んでいるのか (磯貝)POはWhatを、チームはHowをカバーするという前提で。Whatの前提にあるのは、「誰のために何をするのか」というところ。Howはそうした前提がしっかり共有されていれば、いくらでも出てくると思う。私はPOとして、そうした前提を伝えて、チームからどういうものが出てくるかを待って、それをどういうかたちで事業とインテグレートしていくかというのを日々考えている。POとしてやってはいけないことはとくに無いと思っていて、大事なのはチームとの関係性だと思う。
- (会場)様々なサービスやデザインの価値観があふれているなかで、それらの共通項(=良さ?)を見つけるために普段やっていること・心がけていることはあるか
- (M松本)たとえば、サービスを触るときは、いわゆる一時的UXの流れ(どういう気持ちになるか)を考えながらさわってる。自分がつくっているものでもそれらがどうなるかを考えながらつくっている
- (磯貝)メンタルモデルをどう捉えるかという話になると思う。目の前にあるもの(=表層のデザイン)を抽象化して、その裏にあるものが何かを考えていく。こういうことを、(途中であきらめないで)しっかりやるっていうのが大切だと思う
- (C松本)日々「応用すること」を考えてる。物事をファンクションレベルまで分解して、それを別のものに応用できないかというのを思考する
- 例えば飲食店の券売機
- 吉野家では、入店後すぐに座席に座ってほっとできるという体験を提供するために、券売機を設置していない。ここでは、券売機での体験は良くないものとして捉えられている。では、券売機にまつわる体験を良いものとするにはどうしたらいいか
- 券売機で買った食券の内容がすぐに厨房に送られて、座席についた瞬間に食事が提供され、スムーズに食事ができる。こうすれば良い体験といえるのではないか
- → さらにこうしたリアルな体験をWebに応用するとどうなるか、ということを普段から考えている
- (会場)いまご自身をゼロから起業するとして、デザイナーをひとり口説くとしたら、どういう人に声をかけるか
- (C松本)情熱をもっているひと。それ以外ない
- (磯貝)自分とは違う思考の人。自分自身は「考える」ことが好きなので、誘うならとにかく「つくる」ことに前向きな人がいい
- (M松本)起業でいっしょにやるメンバーとしては、一緒に旅行に行けるひとがいい(笑)。デザイナーとしては、インターネット時代が好きなひと・ものを作るのが好きなひと・グラフィックよりもUXよりの話が好きなひとがいいなと思う
【所感】
- メルカリ 松本さんの、意図的に「チームのなかにデザイナーを豊富に投入する」というのが今日イチのびっくりポイント
- こういう内容って、イベントよりもインタビューなどの「記事」にしたほうが分かりやすくなるのかも、とぼんやり思ったりした
- (逆に言うと、記事にすると分かりにくい・記事にしにくい内容をもっと聞きたかった)