【勉強会】UXワイワイCAFE「UX、デザイン思考、サービスデザインのための『ワークショップのワークショップ』」
毎度おなじみのワイワイCAFE、今回は、デザイン思考を広めたい人がデザイン思考ワークショップを実践するために、まずはここで体験してみよう!という回でした。
概要
- https://uxd-hcd-waiwai-cafe.doorkeeper.jp/events/24307
- 日時:2015年6月20日 13:00〜18:00
- 場所:IMJ(青葉台)
- 目的:「デザイン思考ワークショップの名作『The Wallet Project』を"お持ち帰り"!『The Wallet Project(お財布プロジェクト)』という有名なワークショップを題材として、使用する資材のリストを始めとして、普段滅多に目にすることのない『台本』の現物を公開し、さらに、その背後にあるワークショップ・デザインの意図も明らかにします。」
- 講師:利用品質ラボ代表 樽本徹也さん
「体験」ワークショップ
スタンフォード大学d.schoolのデザイン思考体験ブートキャンプ「Wallet Project(お財布プロジェクト)」を、まずは体験。二人ペアになって8分でインタビュー、5分で分析、5分でアイデア発散、15分でプロトタイピング……ととにかくガンガン進んでいきました。
工作たのしい。
ちなみに私がパートナーの方にインタビューしてプロトタイピングしたのは「ブランドムックがついてくるこだわりの財布」。シンプルだけど職人さんのプロ意識が詰まった財布に、制作秘話をまとめた冊子(ムック本)がついてくる、というブランディング重視のプロダクトでした。財布自体をデザインしたというよりは、財布のストーリーをどう見せるか、という方向にシフトしていったような感じです。
最後は成果物品評会。ふせんに感想を書いて貼っていく形式でした。財布を持たなくていいようにするという方向で考えたものや、自由にパーツを組み合わせられる財布など、多種多様なアイデアが出てきていて、興味深かったです。
樽本さんによる「お財布プロジェクト」解説
「お財布プロジェクト」のすごいところを解剖!
すごいところ(1):財布をつくる、というところ
- 財布は、エスノグラフィック(文化人類学)的に最高の材料の一つ
- カギと財布とスマホは、新三大・人間が持ち歩くものである
- 常に持ち歩く = パートナーの「ひととなり」がよく現れる
- 持ち主の生活や思想がリアルにわかってくる
- その人らしい変わったエピソードがでてきやすい
- 参考:ヤン・チップチェイス「サイレントニーズ」
すごいところ(2):デザイン思考の典型的なプロセスを経ている
- 今回のプロセス:
- ワークシート1:表紙、理想の財布
- ワークシート2:インタビュー1(財布について)、インタビュー2(ライフスタイルについて)、要求定義
- ワークシート3:スケッチ6つ、フィードバック
- ワークシート4:ソリューション、フィードバック
- デザイン思考のプロセス:EMPATHIZE → DEFINE → IDEATE → PROTOTYPE → TEST
- いきなりソリューションを考えさせるのではなく、ワークシート1で理想の財布を描かせることであえてFalse Start(失敗からのスタート)させている
すごいところ(3):思考の発散と収束
- 発想を発散させる段階と収束させる段階、この二段階を経ている
- 発散:ワークシート3のスケッチを6つ(6-up template)かくこと
- 収束:いくつかのスケッチからひとつのソリューションを生み出すこと
すごいところ(4):フィードバック
- ワークシート3とワークシート4を作った後で、ユーザー(パートナー)からフィードバックを受けている
- フィードバックループを活かした反復デザイン
- 樽本さんの経験によれば、1回めのフィードバックのほうが有用性が高い場合が多いそう
- 1回めのフィードバック:インタビュー後の要求定義から6つのスケッチを書いて、それをもとに本当に欲しいものはなにかを明確化する
- 2回めのフィードバック:ある程度かたちをつくったあとでのフィードバックは、微調整にしかならない場合が多い
すごいところ(5):プロトタイプ
- 低コストでものをつくって、価値を検証することで、コンセプトを示している
- パリコレの服、モーターショーの車などは、実際に利用することは現実的でない。それでもコンセプトを示すというだけで価値がある
- 今回の場合だと、お財布でないものができてもいい。財布でなくても、お金に関係する財布ではないなにか。むしろそれこそが潜在ニーズを明らかにしている可能性が高い
会場質問
- (会場)デザイン思考のプロセス図で、TESTだけが少しずれているのはなぜ??
- (樽本)わかりません!いろいろ意図は考えられるけど、結局は見た目の問題な気がする(笑)
- (会場)インタビュー1と2で、分けた意図は、False Start?
- (樽本)その通り。もちろん話の流れを自然にするという意図もあるけれど、False Startという意図も大きいと思う。
- (会場)要求を明確にするためのインタビューのしかたが難しいなと思ったんですが、何かコツとかはある?
- (樽本)4分じゃ無理です!今回はブートキャンプなので、無理なことをやってみようということでした(笑)
「再設計」ワークショップ
うちのチームのKPTは上図のような感じで、「K:人の価値観に触れられて面白かった」、「P:インタビューで何を聞けばいいかわからなかった」、「T:おやつほしい」などが挙がりました。
おみやげ
そしてなんと今回は最後に、充実したお土産をいただきました。意図としては、今回やったお財布プロジェクトを参加者それぞれが会社に持ち帰って実際にやってもらうためだそうです。ケアもかんぺき…。
お土産:ファシリテーションガイド(ワークショップのトークスクリプト)と今回使った工作材料の一部。
お財布プロジェクトの詳細はこちらのslideshareで公開されていて、やろうと思えばすぐにでもできる!とのこと。工作材料などの諸費用は20名分で5000円ほどで、参加者一人あたり500円位見ておけばなんとかなるそうです。
さいごに
今回のイベントで個人的に大切だなと思ったキーワードは、False Start。お財布プロジェクトワークショップの流れはもちろん、今回のイベントそのものも、体験 → 解説 → ふりかえり、というかたちになっていて意図的にFalse Startさせているのかなと思いました。あれこれ考えこむよりとにかく実践して後からきっちりふりかえる、
そして、ここまでお膳立てしていただいたからには私も会社でやってみたいなー!と思っていたら…
なんと次回ワイワイCAFEにて、「お財布プロジェクト」ワークショップのファシリテーターとしてお話させていただくことになりました!!
ワイワイ主催チームの方で「今回の参加者の中から希望者を募り次回ワークショップを展開してもらう」というところまで計画されていたそうで、そのチャンスに飛びつかせていただきました。今回お知り合いになった超優秀な方々とチームを組み、次回ワークショップを盛り上げるために頭を捻ります!
ということでご興味のある方はぜひ次回のワイワイCAFEへー!