Curiosity

骨とワニが好きなデザイナーです

モチベーションが湧いてこないのは、それが何ものなのかを知らないからだ

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“モチベーション”って普通に使ってる言葉だけど、本来的にはどういう意味なんだろう、という素朴な疑問が浮かんだので、ざくっと調べてみました。なにか間違いがあれば、ご指摘いただけるとうれしいです。

モチベーションってなに

人を含む動物に、行動を起こさせ、目標に向かわせる心理的な過程(デジタル大辞泉より)。 モチベーション(動機づけ)には、“内発的動機づけ(intrinsic motivation)”や“外発的動機づけ(extrinsic motivation)”などがあります。

内発的動機づけとは

「自己目的的な学習の生起・維持過程」(鹿毛, 1994*1)。ざっくり言うと、“行為そのもの”が行為の“目的”になっている状態。内発的動機づけはその性質として、「知識を深めたり技能を高めたりする学習をしたい!と思う(=熟達指向性)」ことや「自分から進んで学習に取り組む(=自律性)」ことなどをあわせ持っているそうな。

内発的動機づけを“手段の目的化*2”状態と言ってしまうとネガティブな印象になるかもしれませんが、実はうまく利用すれば最高のパフォーマンスを発揮できるものになります。ビジネス界隈で話題に登りやすい“フロー”や“マインドフルネス”なんかもその一環ですね。

外発的動機づけとは

なにかしらの“報酬”や“罰の回避”などのために行為をしようとすること。行為の“目的”と“行為そのもの”が異なっている状態。“内発的”、“外発的”というと対立的なものだと捉えてしまいがちだけど、実際はそうではないようで、その辺はRyanとDeciによって下図のように整理されてます(Ryan and Desi, 2000*3)。

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内発的動機づけの対局にあるのは実は“動機づけがない状態(amotivation)”で、その間を外発的動機づけが段階的にうめているかんじです。外発的動機づけの段階について詳しくは、「自己決定理論」とかでググると解説が見つかります(ここの中間あたりとか)。

内発的動機づけと外発的動機づけが対立ではないっていうのは、ちょっと意外?でした。

自分のモチベーションを考える

こういう心理学的な用語って、頭にあっても普段の生活や実務で意識することって意外に少ないし、まじまじ考えることもそんなないよなと思っていました。今回読んでないですが、2010年発売の「モチベーション3.0」というビジネス書も内容的にはDeciらが言ってることのようで、この時点でも一般知識は10年遅れだったんですね。

「自分自身がどんなモチベーションで、高品質かつ持続的なパフォーマンスを発揮するのか」を個人が把握しておくのって、実際かなり重要です。周りを見渡してやる気がでない言い訳を探すのは誰にでも容易だけど、それじゃあなんにも進まないし、未来の自分に期待もできない。目まぐるしく変化する環境のなかで生きていくためには、行動の起点と維持機構を自身の内面に求め、力の限り走り続けなくてはならないのです*4

私の場合は内発的動機づけに近い状態で動くほうが成果的にも感情的にもわりと顕著にポジティブなので、そういう方向に自分を誘導できるよう今後とも訓練していく所存です*5

デザイナーとしてひとに求められるサービスをデザインするため、そして将来そんなサービスをつくる最高のチームをデザインするため、こういう心理学などの知見も積極的に取り入れていこうと思った2015年。今年もよろしくおねがいします*6

*1:鹿毛雅治, 内発的動機づけ研究の展望, 教育心理学研究 vol.42-3, 1994, online

*2:手段の目的化について、「目的と手段を混同すべきじゃない」というのはよく聞く言葉です(貯金するのは何かやりたいことを実現するためであって、貯金すること自体が目的化しちゃうのは本末転倒だ的な文脈で)。この辺、言葉だけを取り出していくとちょっと矛盾があるように感じますが、ようはどんな“行為”について話しているのかがポイントになってくるのかなとおもいました。目的化してもあまり意味がない“行為”(より狭く言うと、人のためにならない行為)と、目的化することで感覚が研ぎ澄まされて生産性が向上するような“行為”(人のためになる行為)がありそうだなーとか。

*3:Richard M. Ryan, Edward L. Deci, Intrinsic and Extrinsic Motivations: Classic Definitions and New Directions, Contemporary Educational Psychology vol.25-1, 2000, online

*4:ここで急に「赤の女王仮説」。スライドにまとめてるのでぜひ御覧ください!→ Alice in Biology ―鏡の国の生物学―

*5:自分を誘導するためによくやるのは、その時の状況や自分の心境を分析的な視点で見なおして、その背後にはどんな感情の動きがあったのか、どうしてそう感じるのか、みたいなことを考えていくというものです。すると大体最終的に心理学や哲学なんかの小難しい話に行き着きついて、それを見ながら思考していくうちに、自分のなかのネガティブな感情に囚われにくくなる(どーでもよくなる)というところに着地します。知識の幅も広げられるし、オトク感あります。

*6:言い忘れてた新年の挨拶をこのタイミングで!